本記事は、筆者が認知行動療法のカウンセリング(120時間以上)で得てきた「学び」を、整理・凝縮してまとめたものです。
「自分を変えたい」と漠然と(または真剣に)思ったことのある方へ!
生きづらさを解消し、豊かに生きるための一助となれれば幸いです。
【注意】
以下は個人的なカウンセリング記録のノートを元にまとめたものです。筆者は「認知行動療法」を専門的に学んだわけではなく、正確な解釈をし損ねている恐れもあります。あくまで「個人的な知見」「ご参考まで」ということでお願い致します。
目次
- 1. はじめに
- 2. 原則:大失敗を防ぐために「小さい失敗」と改善を繰り返す
- 3. 原則の実践を阻む「認知の歪み」とその対処法
- 関連する先生の動画:パニック障害の曝露反応妨害法【Exposure】について
- 共感する名言 / 本の一節
- <今日のISSEKI>
【本記事のポイント】
- 一足飛びに「失敗しにくくなる=成長する」ことはできない
- 「大失敗」が怖いからこそ、「小さい失敗」と改善を重ねる
- 「わかってはいるけど動けない」主な原因としては、①「大」失敗を想定している、②「失敗=マイナス」と考えている、③「こうあるべき」で高すぎる目標を設定している、などの「認知の歪み」を持っていることが考えられる
- 「認知の歪み」への対処法は、「その考え(例:リスクの想定 / 解釈 / 目標設定)は現実的に妥当か?」を検討し、必要に応じて「現実思考」へと置き換えていくこと
- 上記の「認知の歪み」それぞれへの対処法は、①「現実思考」に基づいてリスクを想定する、②「現実思考」に基づいて(可能な範囲内で)「プラスの解釈」をする、③「自分の不安が40%以下」の「行動」「挑戦」から取り組むこと
1. はじめに
これまでの記事では、「認知行動療法」のカウンセリング初期から繰り返し説明され、学んでいた内容を中心にまとめてきました。
*これまでの記事はこちら!
【2】カギを握るのは「自分の解釈」。感情・気分が生まれるメカニズム
【3】「解釈を変える」2つのハードル。対抗策:①自問する ②クセづける
【4】幸せの極意:「現実思考」をベースに「自分の本心」に従う(自分本位で生きる)
【5】否定的な意見は防げない。「人の目」は「相手」と「場面」に応じて気にする
【6】「自信」をつける方法:最も妥当でブレにくい「公正な自己評価」を積み重ねる
本記事からは、「生きること自体が辛い」というマイナス状態から脱し、「就活」や「ブログ」といった「行動」や「挑戦」を始める(ことに二の足を踏む)後半の時期に学んだことを取り上げていきます。
今回のテーマは、「『失敗』を恐れて動けないときの対処法」です。
2. 原則:大失敗を防ぐために「小さい失敗」と改善を繰り返す
「失敗が怖くて動けない」問題に関して、先生の教えは以下の一言に尽きます。
- 大失敗が怖いからこそ、「小さい失敗」と改善を重ねる
「大失敗」を防ぐには、「小さい失敗」と改善を重ねていくしかない。一足飛びに「失敗しにくくなる=成長する」ことは不可能だからです。
- たとえ失敗しても、次に活かせるなら別にいい
- 「対処法」が学べる失敗は、すればするほど自分を助けてくれる(「大きい失敗」を防げる)
「失敗」を上記のように捉え、許容できる範囲内で(小さく)行動して「小さく」失敗し、改善することを繰り返す。
そのようにして「知識や経験値を積む」ことで、似たような失敗や「大失敗」を可能な限り防止することができます。無理なく着実に「成長する=失敗しにくくなる」ためには、「小さい失敗」が不可欠なのです。
3. 原則の実践を阻む「認知の歪み」とその対処法
「大失敗を防ぐために、小さく失敗する」という上記の原則を頭では理解できたとしても、「実際には動けない」「不安が消えない」状況はあるかと思います。私もそうでした。
「わかってはいるけど動けない」主な原因としては、以下3点の「認知の歪み」を持っていることが考えられます。
- 「大」失敗を想定している(起こる「確率」や起こった際の「マイナスの影響」を、実際よりも大きく見積もる)
- 「失敗=マイナス」と固定して考えている
- 「こうあるべき」で高すぎる目標を設定している(「自分の現状」に基づいていない)
「認知の歪み」とは、「現実思考」でない(現実的に妥当ではない)解釈のこと。
現実的に妥当ではない解釈が不必要な「マイナスの感情・気分(不安・恐れなど)」を生み出すと、それ自体が苦痛なだけでなく、実際には可能な「行動」や「挑戦」を妨げる要因ともなってしまいます。
「現実的に妥当な」恐れであれば抱いて当然ですし、必要でもあります。ですが「認知の歪み」から生まれる「現実的に妥当でない」恐れであれば、不要です。
「認知の歪み」は、つど「現実思考」へと置き換えていくことが大切です。
「その考え(例:リスクの想定 / 解釈 / 目標設定)は現実的に妥当か?」を検討し、妥当でないなら、「現実思考」に基づいた考えへと置き換える。上記3点の「認知の歪み」の対処法について、それぞれ具体的に後述していきます。
*「現実思考」の詳細はこちら!
①「大」失敗を想定している
大失敗が怖いからこそ、小さく失敗する。それが「頭ではわかっていてもできない」場合、考えられる原因の一つは以下です。
- 「認知の歪み」によって、現実的に妥当でない「大」失敗(過度なリスク)を想定している
非現実的な「大」失敗を想定していれば、「不安」や「恐怖」といった「マイナスの感情・気分」を必要以上に感じて当然です。それらの感情・気分が「行動」や「挑戦」を妨げるため、「わかっているのに動けない」事態へとつながるわけです。
一口に「失敗」と言っても、「挽回もやり直しも一切できない」「生死にかかわる」といった「大きい失敗」はそうそう起こりません。滅多に起こらないからこそ、「大きい失敗」とも呼ばれるわけです。
一方で、「大きい失敗」ではない「小さい失敗」は、挽回・やり直しが可能です。起きてしまったとしても、その後の動き次第で「取り返しがつく」ということです。
挽回不可能な「大きい失敗」が起こる確率を高く見積もったり、「小さい失敗」を「大きい失敗」と捉えたりして現実的に妥当でない「大」失敗を想定すると、不必要な「マイナスの感情・気分」を感じて動けなくなってしまいます。
これは、あらゆる失敗を恐れず、リスクへの配慮も無しでとにかく挑戦しよう、という話ではありません。
失敗への「不安」や「恐れ」は、認知行動療法の大原則「現実思考」に基づいて「適切に」「必要な分だけ」持つことが大切、ということです。「行動」や「挑戦」を不必要に制限することは「大損」だからです。
②「失敗=マイナス」と考えている
「大失敗が怖いからこそ、小さく失敗する」を妨げる2つ目の原因は、「失敗=マイナス」という「認知の歪み」です。このような捉え方をしていれば、不必要な「マイナスの感情・気分」が生まれ、「行動」や「挑戦」をためらうのも道理です。
実際には、出来事や状況を「どのように解釈するか」は、ほとんどの場合で「自分次第」なので、「失敗=マイナス」と固定的に捉える必要はありません。
「失敗」の定義を、仮に「予想や望みとは違う結果」とします。
ある「予想や望みとは違う結果」を「失敗」だと「マイナス」に解釈すると、「悲しい」「傷つく」といった「マイナスの感情・気分」が生まれます。
一方で、同じ「予想や望みとは違う結果」であっても、それを次回へと活かせる「発見」や「学び」、つまりは「プラス」に解釈すれば、「喜び」や「希望」といった「プラスの感情・気分」が生まれます。
たとえ「失敗=予想や望みとは違う結果」になったとしても、そのことが即「マイナスの感情・気分」につながるとは限りません。「自分の解釈」はある程度コントロール可能なので、そこから生まれる「感情・気分」のプラス・マイナスも可変だからです。
不要な「マイナスの感情・気分」は感じるだけ「大損」なので、上記のような「認知の歪み」はそのままにせず、つど「現実思考」で置き換えることが必要です。
さらには、出来事や状況を、「現実思考」をベースに可能な限り「プラス」に捉え、「プラスの感情・気分」を感じる。
これが、「行動」や「挑戦」を過度に妨げず、かつ「プラスの感情・気分」をできるだけ感じて生きていくための、現実的な処世術の一つだと考えます。
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補足:他者からの「厳しい意見」は「現実思考」で選別する
他者からの「厳しい意見」を恐れるという意味で、「失敗=マイナス」と捉え、「行動」や「挑戦」を制限している側面も大いにあるかと思います。
この場合でも、大切なのは「現実思考」です。
他者からの「意見」や「評価」が必ずしも「正しい」とは限りません。考慮に入れる(気にする)かどうかを、「現実思考」で選別することが必要です。
ある「失敗=予想や望みとは違う結果」を「マイナス」に解釈したり、そもそも根拠に欠けていたりする他者からの「厳しい意見」をもらったとします。
それに「もっともだ」と同調すれば、「悲しい」「傷つく」といった「マイナスの感情・気分」が生まれるのは当然です。
一方で、その意見を「現実思考」で照らし、妥当性がないことから「中傷目的の意見」あるいは「価値観が合わない人からの意見」と判断し、その解釈に同調しなければ、「マイナスの感情・気分」は生まれません。「傷つかない」ということです。
同じ「厳しい意見」でも、現実的に妥当であれば適切な「批判」であり、「中傷」ではありません。必要に応じ、考慮に入れたほうが建設的です。
「現実思考」をベースに「プラスの解釈」をし、「プラスの感情・気分」を感じることは、現実的に妥当な「批判」をも無視したり、自分を「過大評価」したりすることとは異なります。
他者の「意見」や「評価」は、うのみにするでも無視するでもなく、「現実思考」で選別し、「参考程度」にすることが大切です。
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③「こうあるべき」で高すぎる目標を設定している
「大失敗が怖いからこそ、小さく失敗する」を妨げる3つ目の原因は、「こうあるべき」という「認知の歪み」によって、「今の自分」にとっては高すぎる目標を設定していることです。
目標が「今の自分」にとって高すぎた場合、当然ながら「失敗」への「恐れ」や「不安」を強く感じることになり、「行動」や「挑戦」の妨げとなってしまいます。
無理をして行動できたとしても、不要な「マイナスの感情・気分」を感じている以上、前向きな取り組み方とは言えません。
目標設定のコツは、「自分の不安が40%以下」つまりは「無理がない」こと。
上記①②の対処法のように「現実思考」での捉え直しも大切ですが、ここで最重要なのは、自分が考える「理想」ではなく「自分がどう感じるか」を基準に目標設定することです。
その目標が「人にどう思われるか」「一般的に見てどうか」「周囲と比較してどうか」などを気にすることは不要です。「他人」と「今の自分」は別の人間だからです。
以下は、目標設定に関連する先生の言葉です。
挑戦やトラウマ治療には「段階的曝露」が重要です。
一番に考えるべきは、自分が感じる「不安」が「40%以下」であることです。
*「段階的曝露」とは、認知行動療法の技法の一つである「曝露・反応妨害法」を、小さなことから「段階的に」「無理なく」行っていくことを指します。たとえば「パニック発作が起こることが不安で、電車に乗れない」場合、いきなり「電車に乗る」のではなく「駅に行くことをイメージする」。そのような「段階的」曝露をして少しずつ自信をつけていき、最終的に不安や恐怖を乗り越える、という技法です。
*曝露・反応妨害法:自分が不安と思う出来事に「曝露」する(向き合う)ことで生じる「反応」(逃げる・避けるなど)を「妨害」し、不安や恐怖を克服する技法
「自分の不安が40%以下」という「できる範囲」で「行動」や「挑戦」を始め、「小さい失敗」と改善を繰り返す。
これが、「成長する=失敗しにくくなる」ための現実的な方法の一つです。
関連する先生の動画:パニック障害の曝露反応妨害法【Exposure】について
<動画のポイント>
- 「曝露反応妨害法」とは、認知行動療法の技法の一つ。不安と思う出来事に対して曝露する(向き合う)ことによって生じる反応(逃げる・避けるなど)を妨害し、不安や恐怖を克服する
- 「曝露反応妨害法」の目的は、「自分の不安や恐怖には根拠がない」「身体症状(動悸や発汗)は、自分でコントロールできる」と知ること
- 重要なのは、曝露を「段階的に」行うこと。不安が小さい出来事から、自分のペースで無理なく取り組み、少しずつ自信をつけていく
共感する名言 / 本の一節
①ジョセフィン・テイ『裁かれる花園』
イギリス人というのは、安易な成功には儀礼的な拍手を送るだけだが、勇気ある失敗には心動かされるのだ。(p.269)
*「勇気ある失敗」という表現が印象的でした。「現実思考」に基づいてリスクの想定や解釈・目標設定をし、前向きな気持ちで目標実現に取り組みたいと思います。
②デュ・モーリア『埋もれた青春』
皮肉と感傷とは、人の心の両極端でどちらも避けなければならなかった。
*「皮肉」であれ「感傷」であれ、「現実思考」から離れると大なり小なり苦痛につながる、というふうに解釈しました。「皮肉」も「感傷」も、「どうせ失敗する」と諦めたり、「なるようにしかならない」と向こう見ずに動いたりする状況を招きかねないと思います。冷め過ぎず、湿っぽくもなり過ぎずに、「現実思考」を前提に「自分のペースで」行動し続けたいと感じました。
③レイモンド・チャンドラー『プレイバック』
「これほど厳しい心を持った人が、どうしてこれほど優しくなれるのかしら?」、彼女は感心したように尋ねた。
「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」
*「バランスが大切」という点で、②の一節とも関連すると思います。「厳しさ・冷徹さ(hard)」と「優しさ(gentle)」の両方なくしては、おそらくうまく生きてはいけない。そこに困難や苦々しさを覚える一方、「現実思考」はあくまでも「手段」や「道具」に過ぎないので、そこに撤しきれない瞬間があってもそれはそれで仕方ない、と肩の力を抜く解釈もできるなと感じました。
今回は以上です。
読んでくださってありがとうございました!
<今日のISSEKI>
「不安が40%以下」で行動し、「小さい失敗」と改善によって前進する。