前回の記事を書くにあたって、「バランスが大事」と改めて感じました。
- 「律する」と「ゆるめる」
- 「注力」と「休息」
- 「目標達成(成果)」と「継続」
これらのバランスをうまく取ることができたら生きやすいし、楽しそう。良い結果にもつながりそうです。
*前回の記事
最近読んだ『科学的な適職』でも、
- 「合理性」と「直感」
のバランス(切り替え)の大切さについて、触れられていました。
たくさん学びがあったので、感想をまとめたいと思います。
お役に立てれば幸いです!
目次
本書を読んで学んだこと
1. 「仕事の幸福度を決める7つの徳目」
仕事の幸福度を決める7つの徳目
①自由 ②達成 ③焦点
④明確 ⑤多様 ⑥仲間 ⑦貢献
特に「③焦点」の章がおもしろかったです。
具体的には、「焦点が合っているか:自分の『モチベーションタイプ』と合った仕事か」が仕事の幸福度を決める徳目の一つ、とのことです。
「モチベーションタイプ」とは、以下の2つの型を指すとのこと。
それぞれ「適職:充実感を得やすい仕事」の傾向が説明されています。
- 攻撃型の適職:進歩・成長がキーワード
- 防御型の適職:安心感・安定感がキーワード
診断では、質問の答えを点数化して、それぞれの合計点を算出します。
私は以下の結果でした。
- 1回目
- 攻撃型:30点
- 防御型:50点
- 2回目(1週間後)
- 攻撃型:49点(+19点)
- 防御型:54点(+4点)
*2回目のときは1回目よりも元気が良くて前向きな気分だったので、「攻撃型」が20点も上がっています。
診断を受ける際の「メンタルの状態」で影響は受けますが、「防御型が優勢」な点は変わりません。「防御型」が私のモチベーションタイプのようです。
「やっぱり」という感じですが、それが客観的に明確になったことで、今後を考えるうえでの一つの「軸」がハッキリしたように思います。
10分弱の時間と、紙とペンがあればできる簡単な診断なので、何度か実践して結果を比べるのもおもしろいと思います!
2. 私はバイアス(偏ったものの見方)に陥りやすい
全ての人間が生まれ持つバイアス(偏ったものの見方)に気づき、意思決定を見直す。(p.235)
このバイアス(歪み)に陥ることで、以下のようなチグハグな事態になりがちです。
- 「現在(いま)」を拡大視→未来の「リスク」や「可能性」を軽視
(例)夜更かしする。食べ過ぎる。先延ばしにする。
「いま不幸→この先も不幸」と考える。失敗で過度に落ち込む
- 「自分(主観)」だけで考える→「不要な心配」「過度な楽観」
(例)小さな挑戦もしない。「人はこう思うはず」と決め込む
「自分だけはできる、大丈夫」と根拠なしに思う
一つ一つの例が必ずしも「間違っている」わけではありません。
ただ、客観性や公正さに欠けた考え方は、「現実的に妥当でない」判断や生き方につながります。バイアスや認知の歪みに囚われていると、物事がうまくいかなかったり、生きづらくなったりしやすい側面はある、と思います。
少なくとも、辛さの原因が「バイアス」なら、取り除いたほうが楽です。
「バイアス」はその自覚を持って、自分にとってプラスになる方法で活用したほうがいい。「認知行動療法」のカウンセリングを受けている経験から、私はそう感じます。
本書の内容に戻ります。
これら「バイアス」「歪み」を防ぐための手段として、本書では以下のような技法が紹介されていました。
- 10/10/10テスト(10分後・10ヶ月後・10年後を考える)
- (「私は」ではなく「〇〇は」と)三人称で考える
- 友人に頼る(友人の意見を訊く)
それぞれが、「固定された一つの(狭い)視点」から、「複数の(広い)視点」を持って総合的に考える手助けをしてくれます。
- 【時間】「現在(いま)」→「人生全体」
- 【視点】「自分(主観)」→「他人たち」
結局のところ、ほとんどの場合で「客観的に完璧な選択:正解」は分かりようがありません。その中でも、なるべく「良質な選択」をしたい。
「良質な選択」とは、
- 現実的に可能な(あり得る)範囲
- かつ本人が前向きでいられる
ものだと考えますが、これらは非現実な「バイアス」「歪み」に囚われていては、得難いものです。
そんな事態に対処するためのキーワードの一つとして、本書では「拡張された自己」という言葉が取り上げられていました。
未来を思うことで判断力が上がる現象のことを、心理学では「拡張された自己」と呼びます。
(自己を拡張すれば一段上の判断力が身につく)(p.211)
例えば上記の「10/10/10テスト(10分後・10ヶ月後・10年後を考える)」は、「現在(いま)」を拡大視(重視)しがちなバイアスから逃れる(「未来志向」を手にする)ことで、「良質な選択」をするうえでの一助となってくれます。
この点は、以前に読んだ『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』でも繰り返し触れられていた技法(未来の自分と対話する)と共通していたので、その必要性を改めて実感しました。
関連書籍①:『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』
(中略)70歳・80歳・100歳になった自分がいまの自分をどう見るか考えてほしい。いまあなたがあなたがくだそうとしている決断は、未来の自分の厳しい評価に耐えられるだろうか?
『LIFE SHIFT』(p.37)
ここで自問すべきなのは、「70〜80歳になったときの私は、いま私がくだしている決断を評価するだろうか?」という問いだ。
『LIFE SHIFT』(p.263)
未来の自分のための計画は、誰か他人のもののように見える。では、80歳になった自分がいま隣に座っていると想像してみてほしい。80歳のあなたは、いまあなたがどのような点を尊重することを望むだろう?(未来の自分に責任をもつ)
『LIFE SHIFT』(p.282)
関連書籍②:『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』
長寿化の時代にこのような視点をもつことの利点は、未来の自分を大切にし、未来の選択肢を広げるための投資を積極的におこなうようになることだ。
『LIFE SHIFT2』(p.77)
*「このような視点(=鳥の目型の視点)」について補足
「鳥の目型の視点」とは、飛んでいる鳥が上空から見下ろすように「人生の全体」を捉える視点を持つことを指します。行動経済学の概念「現在バイアス」の一つの解決策として取り上げられていました。
「現在バイアス」とは、「人生全体でどのように時間を割り振るかを決める際に、目先の損得や間近に迫った出来事にばかり目が行きがちになる(p.76)」現象のこと。
鳥の目型の視点を持つことで、「過去・現在・未来」それぞれの重要性を(均等に)感じやすくなります。「現在」を過度に重視する「現在バイアス」脱却の有効な手立てとなってくれるわけです。
上記の内容は、「時間に対する考え方を変える」「未来の時間をどう考えるか?」「人生全体の時間配分を再検討しよう」といった文脈で語られています。「鳥の目型の視点」を持った考え方は、「未来志向(p.73)」とも表現されていました。
「未来の自分」と対話することで、時間的なバイアス、主観的なバイアスの両方を取り払い、「拡張された自己」が得られやすくなります。
『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』の内容は以上です。
3. 最大の学び:「バランス」と「切り替え」が大切
(中略)目の前の選択肢についてしっかりと考えたら、あとは人生の流れに身を任せる。これがキャリア選択における「人事を尽くして天命を待つ」の正しい姿です。(p.280)
具体的には、以下のような内容で説明されていました。
- 人生の節目→論理的に意思決定
- それ以外→流れに身を任せて、日々のタスクに集中
この部分は、別の章で取り上げられている「職業選択にありがちな7つの大罪」の6つ目、「直感で選ぶ」との共通項があるように感じます。
(中略)ほとんどの人生の選択においては、論理的に考える人のほうが人生の満足度が高く、日常のストレスも低い(中略)(p.85)
科学的に最適な「適職選び」をテーマに書かれた本書なので、やはり「合理性・論理性」の大切さは丁寧に語られています。
しかし限界(予測不可能なこと)は存在するので、ある程度のところで(最後には)「身を任せる」必要がある。
「直感」だけで選ぶのは良くないが、「合理性」だけを常に考えることや、「合理性」を追求して決断できない事態も望ましくない。
このバランスのあんばい、さじ加減が難しい! と感じましたが、その解決案の一つとして、先に取り上げたような「バイアスを取り除く」技法で「拡張された自己」を持つこと、そして選択の「練習」をして精度を上げていくことがあるのかな、と解釈しました。
関連書籍③:『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』
「緩急のバランス・切り替えが大切」という考え方は、こちらで取り上げられていた「満足化」の方法論に近いものがあると感じます。
*満足化は、「ノーベル賞を受賞した経済学者、ハーバート・サイモンが最初に唱えた方法(p.50)」とのことです。
日々、選択肢があまりに多すぎるという問題に対処するには、〝満足化〟という方法を採るといいだろう。(中略)満足化とは、ある程度以上、良いと思えるものが1つ見つかったら即、それを選ぶ、という方法である。
『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』p.50)
なにかを買うとき、決断を下すときに、細かいところまですべてを検討するわけではない。なにもかもが最良と思えるものが見つかるまで待つということはしないのだ。あまりに細かく検討をしてしまうとストレスもたまるし、かえって不満や後悔が大きくなる。それでは時間やエネルギーなどの資源を無駄遣いすることになるだろう。
『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』(p.50)
- 「目の前の選択肢についてしっかりと考えたら」『科学的な適職』(p.280)
- 「ある程度以上、良いと思えるものが1つ見つかったら」『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』(p.50)
と、「合理性」や「検討段階」から「選択(意思決定)」へと切り替えるタイミングの見極めについては、あまり具体的に語られていません。
良いバランスの取り方、折り合いの付け方には絶対的な基準がなく、経験的に(練習によって)習得していく以外、ないのかもしれません。
『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』の内容は以上です。
アクション・プラン(私の場合)
1. (就活するなら)これで仕事について考える
「仕事の幸福度を決める7つの徳目」を参考に、判断の「軸」をつくりました。
仕事の幸福度を決める7つの徳目(*再掲)
①自由 ②達成 ③焦点
④明確 ⑤多様 ⑥仲間 ⑦貢献
- 自由(裁量権)の程度は合いそう?(時間・場所・ペース配分など)
- 達成:貢献(会社や社会に対して)を実感できそう?
- 焦点(モチベーションタイプ:基本的に「防御型」)は合っている?
理想論かもしれませんが、働くことに対して「わくわくするか?」がポイントかなと思いました。
2. 未来の自分と「対話」して、「拡張された自己」を目指す
- 私はバイアス(偏ったものの見方)に陥りやすい。それを自覚する
- 現実的・客観的な判断のために、「拡張された自己」を持つ
- 具体的には、70・80・100歳…になった自分と対話する(頻繁に!)
3. 「満足化」の手法を意識的に取り入れる
- 良い選択には、緩急の「バランス」と「切り替え」が大切
- 「満足化」で、良質な選択をする「練習」を積む
終わりに
ある選択が、本当に「最高の選択(=正解)」なのか、あるいはだったのか?
それは究極的には分かりません。主観的には決められますが、ほとんどの場合、「客観的に完璧な選択:正解」は「決めようがない」からです。
これは「客観的に完璧なおいしさ」が決められないことと同じだと思います(「おいしさ」の基準は人それぞれです)。
判断しようと思ったら、最後には自分という「主観」で思い切る(=意思決定する)しかない。「合理性」と「主観(直感を含む)」のバランス・切り替えが大切です。
「おいしさ」は自己完結できますが、仕事やキャリア選択はそうはいきません。まわりとの兼ね合いも必要なので、現実性・客観性・公正さも大切になってくる。
そこで、「未来の自分と対話する」などのバイアス対策を取り入れる。「拡張された自己」を手に入れ、ものごとの捉え方や選択を「練習」していく。
その過程で、主観的にも合理的にも精度の高い「良質な選択」ができるようになるのだと思いました。
今回は以上です。
読んでくださってありがとうございました!
<今日のISSEKI>
「拡張された自己」を持つこと。
そのために、「未来の自分と対話」すること。